『\風景』から感じたざわついた感じをいつかまとめるためのメモ

新津保建秀さんの写真集『\風景』を眺めた.ざわついた感じがした.そのざわつきをいつかまとめるためのメモ.

\風景とは,風景の持つ本来の意味を無効化する.無効化すると言うことに「強い」感じがしている.この強い感じが,new jpegsと違うのかもしれない.new jpegsは,もっと投げている感じがある.どこかへ投げてしまうようなこと.

でも, \風景もどこにいるのかわからなくなるような感覚がある.デスクトップで「風景」を見ること.これが風景の無効化につながる? 

デスクトップの風景には,今までの風景とは異なる情報が多くある.ウィンドウの情報 ファイル名 拡張子jpeg ping raw デスクトップの青さ もう一つの風景.写真家が見ている風景. スクリーンショット.スクリーンショット /デスクトップの重なりによる風景の多重化.けれど,ウィンドウの枠を隠してしまえば,ただの風景に見える.そして,写真をめくっていくと,いくつかのページは「ウィンドウ」を隠して構成されているのではないかと,勝手に思ってしまう.

風景の多重化.これも一つのきっかけかもしれない.風景のバージョン化.ウィンドウの枠や,その他デスクトップから読み取れる情報.写真をめぐるメタデータがそこに記されている.そこに意識が強く向かう人と,そうではない人がいるだろう.しかし,メタデータがあることで,意識するにしてもしないにしても,何かしらブレが生じる.

写真集を見ている時の感覚のブレ.風景を見ているのかテスクトップを見ているのか.ここにデスクトップと言う選択肢が出てくることによって新しいブレが生じているのではないだろうか.それはおそらく藤幡さんが言っていた3つの空間ということとも関係しているのであろう.

コンピュータ・ディスプレイ上の写真イメージは,画面内の特定の場所にしか表示されないわけではなく,画面内の自由な位置に置くことができる.イメージとディスプレイのピクセルは一対一対応する必要がない.見ている対象であるディスプレイ・メディアと,その内部に表示されているイメージは,写真の印画紙のように,一対一対応している必要がない.コンピュータの内部に仮想の空間があることを理解しなくてはならない.つまり,現在のわれわれは,現実空間,仮想空間,イメージの空間という三重の空間を,無意識のうちに行き来しているのである.(p.215)
イメージとして定着された空間と現実空間とをつなぐものとして写真技術があったとすると,それらの中間の仮想の空間が,デジタルの技術によって出現したということだ.ここまでの議論は,その表示媒体としての紙からディスプレイ装置への変化によって生みだされている変化に対する気づきの話である.(p.217)
不完全な現実:デジタル・メディアの経験藤幡正樹 

現実のイメージを仮想に置いて見る.現実のイメージを仮想において,それを撮影・スクリーンショットして,プリントして,写真集というかたちで見ること.現実のイメージを仮想において見ているところを撮影して,そのイメージを現実に置いて見ること.そのあいだで生じる,現実とイメージと仮想とのあいだのズレ.そのズレのなかで風景が無効化する.あるいは,無効化した風景が風景になる.中間の仮想の風景というものが,『\風景』を眺めていくという行為のなかで,鑑賞者の意識に立ち上がってくるのではないだろうか.

現実という空間,写真というイメージ空間,デスクトップという仮想空間という三つの関係が入り交じっているために新しいブレが生じている.でもそこにそれらを実際に操作するカーソルは写っていない.カーソルの不在はデスクトップ・リアリティを考えるときに大きい.カーソルの有無は,大きな違いを生む.だから,『\風景』はデスクトップ独特のリアリティを表現しているというよりは,現実と写真との関係をデスクトップ経由で表現しているという感じがしている.このことは,この写真集がこれから多くのところで取り挙げられることにつながると思う.

最後に,全く本文とは関係ないですが,このメモはiPhoneの音声入力からのメモに書き足すという感じで書きました.

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